のとじま水族館で人気を集めるイルカにも、海洋危機の影が迫っています。
七尾湾に浮かぶ能登島・のとじま水族館で7月15日〜8月31日に開催される人気の体験プログラムが「イルカとのふれあいビーチ」です。夏になると水族館横の海にカマイルカを放して、人と触れ合えるよう訓練します。そこは遮る物のない七尾湾の自然の海です。学芸員の加藤雅文さん(展示・海洋動物科長)が懸念する海洋危機とは、海ゴミです。特に自然に還ることのないプラスチックゴミは、ふれあいビーチの海岸にも多数漂着しています。風向きや潮の流れが変わると、七尾湾の海から大量に流れ着くそうです。比較的小さなプラスチックのゴミをイルカたちがエサと間違って食べてしまう危険性があるため、イルカのトレーナー達もゴミの問題を気にしていました。
実際、プラスチックゴミなどを誤食したイルカやクジラが死んでしまうという悲惨な事例が、世界中で報告されているのです。沖縄県の人気観光スポット美ら海水族館でも、死んだマダライルカの胃袋の中から大量のゴミが出てきた事例がありました。このマダライルカは1997年10月に同水族館で保護したものの2日後に死亡。解剖の結果、ゴミをエサと間違って食べてしまったため消化できずに死亡したと思われています。
七尾湾だけではありません。能登と言わず加賀と言わず、海岸には大量のプラスチックゴミが押し寄せています。漁具など海辺での人間の活動から出るのは僅か20%。海ゴミの80%は、実は陸からやって来ます。山や谷、そして町で捨てられたゴミが雨で側溝などに流れ出し、川を伝って海へと流れ込み、海岸に打ち上げられるのです。私たち人間の町での生活が、イルカ達を脅かしているわけです。
世界が直面する重大な問題について研究・討論を続けている団体「世界経済フォーラム」が、2017年1月に衝撃的な調査リポートを発表しました。それによると、2050年までに海ゴミの量が海にいる魚の量を超える可能性があると言います。特にプラスチック素材が深刻で、過去50年間でプラスチック素材の利用は20倍に急増、「今後20年で現在の2倍に増えるだろう」と世界経済フォーラムは警鐘を鳴らします。プラスチックが多く使われているのは、容器や商品パッケージです。リサイクルされずに海に流出するプラゴミは、世界で毎年800万トンに上ると見られています。
海の生き物はイルカだけではありません。海ゴミが原因でクジラが死んだと思われる深刻な画像も見て下さい。命の源である海には、膨大な数の魚介類が生息しています。海岸に漂着したプラスチックゴミは清掃で撤去することが出来ます。しかし世界中の海の中に存在するゴミは、私たちの目には届かず、撤去しようもありません。町で山でもプラスチックゴミを出さないことしか対策がないと言っても過言ではないのです。
イベント名 | イルカとのふれあいビーチ |
日程 | 7月15日〜8月31日 |
場所 | のとじま水族館 |