山深い上黒丸にも海の幸が表現されていた
上黒丸 北山 鯨組 2017
昔は山海の幸を交換していた
里山暮らしにも「海」が絡む
山里に広がる鮮やかな大漁旗、水田に浮かぶ船…。坂巻正美作「上黒丸 北山 鯨組 2017」は、山の幸と海の幸を交換していた昔の素朴な暮らしを表現。古びた農家の屋内にも小舟が置かれている。
大量の塩が「大海」を形成
のどかな三崎の民家が舞台
“塩の海”に様々なオブジェ
民家と塩が織りなす不思議
珠洲市三崎地区の農村。民家に入ると、居間や床の間を埋め尽くす大量の塩が海を形成する。岩崎貴宏作「小海の半島の旧家の大海」は、京都・竜安寺の石庭の様でもある。いろんな角度からじっくり鑑賞すると、いろんな海や暮らし、時代が浮かんでくる。
金沢美術工芸大学アートプロジェクトチーム「スズプロ」の作品
飯田の古民家全体が作品に
壁に描かれた「奥能登曼荼羅」
里山里海、祭り、暮らし、人
珠洲市の中心部・飯田には7つの作品が集中する。奥能登国際芸術祭を機に結成された金沢美術工芸大学アートプロジェクトチーム「スズプロ」が、約1年半をかけて、飯田の古民家全体に多彩な珠洲の民俗を表現した作品が「静かな海流をめぐって」。蔵の壁に描かれた圧倒的色彩の「奥能登曼荼羅」のほか、古民家に残された生活用品を天井から吊った「いえの木」など、随所に能登の暮らしを感じる。
かつてスナックだった建物内部に木工の魚介類が
スナックの店内を魚が泳ぐ
海中から見たイカ釣り漁
巨大なカニが座敷に居座る
飯田にある古びた建物内に吉野央子作「LUEN 光陰」。2階のスナックには、魚の木工作品が吊され潮の流れ、魚の勢いを感じる。入り組んだ居間や座敷など居住部分にも様々な生物が配置される。三方を海に囲まれた珠洲の豊かさを想起する。
山里、町、古民家──いろいろな作品が「海」を意識している。それは、人の暮らしにとって「海」が、如何に重要な存在であるかということ。古来から海に生かされてきた人間が、豊かな海を次代に残すことが求められている。
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