霊峰白山を源流として日本海に流れ込む手取川の河口付近では、古くから水産加工品が作られ、なかでも毒を持つふぐの卵巣をぬか漬けにした「ふぐの子ぬか漬け」は、北前船のころから受け継がれてきた恵みです。
幕末から明治にかけて北前船の寄港地として栄えた美川町は、北前船貿易に端を発する海産物加工業が発展し、糠漬けや粕漬けの工場がひしめきます。時代の流れで今は6社になってしまいましたが、最盛期は40を超える海産物加工業者が存在したと言います。水産加工品のなかでも特徴的なのが、毒のあるふぐの卵巣をぬか漬けにした「ふぐの子ぬか漬け」です。ぬか漬けにすることで毒が抜け珍味になります。「ふぐの子ぬか漬け」が作られるようになった歴史について水産加工会社「あら与」の荒木荒木敏明代表取締役は、北前船がもたらしたものと、米どころの知恵が融合して、保存食として生まれたのが始まりではないかと教えてくれました。
霊峰白山を源流として流れ、日本海に注ぐ手取川。その伏流水に恵まれて栄えた美川の町が、手取川河口の右岸にあります。特に伏流水が豊富に湧き出る安産川(やすまるがわ)沿いでは、町の所々に伏流水が自噴する水場があり、人々の生活を支えています。手取川が注ぐ日本海の海底にも伏流水は噴き出し、そこに魚が集まってくるようで、白山〜手取川〜日本海とつながる自然環境が豊かな水産資源を育んでいます。美川漁港に水揚げされた魚を捌く海産物加工業にとっても、豊富に湧き出る伏流水は大変な恵みをもたらしてきました。しかし昨年発生した白山麓の斜面崩落が手取川の長期にわたる濁りにつながり、貴重な資源である伏流水の減少をも招いています。「あら与」の荒木敏明代表取締役は「いちまでもあるかわからない自然のもの。自然環境も変わっていくので、対応しなくてはならないと思っている」と話していました。
イベント名 | 手取川(1)ふぐの子ぬか漬け |
日程 | 8/13 |
場所 | 手取川河口付近、美川漁港、「あら与」 |