奥能登の内浦。富山湾に面した能登町宇出津は、幾多の定置網が集積する漁業の町。特に冬場の天然能登寒ぶりは有名だが、能登半島地震で漁の設備は大きなダメージを受け、断水の影響も長引いた。製氷施設も破損して水揚げした魚の鮮度を保つ氷が現地で作れず、金沢から運ぶ日々だった。
地震で陥没した漁協の競り場に、宇出津の鮮魚店を切り盛りする下平真澄さんの姿が。店舗の水も回復し、震災前の作業が出来るようになった。新鮮で美味しい能登の鮮魚を全国配送する下平さんの「今」を伝える番組は、6月9日(日)に放送。
https://youtu.be/LntWS9hWRMo?si=5T9SxgSE9R3azkBT
5月22日(水)早朝。能登町宇出津港に面したJF能都支所に、主に定置網漁で水揚げされた新鮮魚介が並んでいた。アジ、タイ、サワラ、フグ、サザエ、タコ、スルメイカ…。能登半島地震で港町は大きな被害を受けたが、断水も解消し、主力産業の漁業も活気を取り戻しつつあった。
午前7時、競り場に仲買人の下平真澄さんがやってきた。宇出津のしたひら鮮魚店を切り盛りする若き魚屋だ。競り場に並ぶ様々な魚介を目利きして、競りに臨む。
7時15分、競り場に甲高いベルが響くと同時に、朝競りが始まる。水揚げされた魚貝はやや少なく競りは高値で推移したが、下平さんは目当ての魚を次々に競り落としてゆく。したひら鮮魚店はもちろん地元向けの鮮魚販売も行うが、奥能登の新鮮魚介を捌いた刺身の通販が、実は重要な収入源となっている。目利きしながら発送する刺身セットの組み合わせも考えている。
8時過ぎ、仕入れた鮮魚を宇出津の裏通りにある店舗に運ぶ。店舗前の道は地震で破損したまま。マンホールが突き出して車一台がやっと通れる状況は、発災5ヶ月余を経ても変わっていない。過疎が進む奥能登地区は、道路や上下水道などのインフラを補修整備する業者も数少ない。全国からの応援を求めたいものの、長期にわたって工事業者が寝泊まりできる宿泊施設自体が数少ない上に、施設自体が被災しており、それが復旧の妨げになっている。
3月上旬に断水が解消したしたひら鮮魚店では、漸く震災前の仕事が出来るようになってきた。水道は鮮魚店の生命線。発災当初は捌くことが出来ず、それでも能登の魚介を求める顧客には、仕入れた魚をまるごと送る日々だったという。
今は能都支所で競り落とした魚を丁寧に捌いて送り届ける本来業務を再開できるようになった。したひら鮮魚店のファンは全国にいる。もちろん能登半島地震の影響も知った上で、「営業が再開されて能登の魚を食べられる日を待っています」などの励ましの言葉が胸に響いたと、下平さんは語った。
宇出津港は海面が高く、入り江の南側では津波で破損した店舗や住宅も多い。漁協施設のダメージも大きく、競り場の段差や亀裂も修復できない状況。海水を汲み上げて滅菌するポンプも破損しており、震災前の姿には戻れない。それでも漁業従事者や水産加工業者は事業を再開し、新鮮で美味しい奥能登の魚を、金沢の飲食店や私たちの食卓に届けてくれている。
イベント名 | 再開した能登町宇出津の漁業と鮮魚店 |
日程 | 2024年5月22日(水)撮影 |
場所 | 能登町宇出津 |
協力 | したひら鮮魚店、JF能都支所 |