全国的に有名で重要無形民俗文化財にも指定された輪島の海女漁ほどの規模ではありませんが、能登半島さいはての珠洲にも、海の暮らしと密着した素潜り海女がいます。珠洲市高屋町の番匠さとみさんは、“駆け出し海女”。地元の海が好きで素潜り漁を始めましたが、2024年元日発災の能登半島地震でふるさと高屋の海は2-3mほど隆起し、通い慣れた海岸線は100〜200メートルほど沖に遠ざかってしまいました。
(水中撮影は珠洲市飯田町の谷野旅館の若主人・谷野輝彦さん)
8月21日、高屋での素潜り漁を撮影しました。震災後の海を心配していましたが、海中の岩場には海藻が繁茂し、岩礁の陰にサザエが生息していました。しかしさとみさんの父・番匠栄作さんによると、海底地形が地震によって崩れて平準化し、起伏がなくなった所があるそう。サザエやアワビの生息域が変化しているのは確実で、素潜りで新たな海底漁場を探す手間と年月が必要となります。
高屋町の東、急峻な坂道(通称ラケット道路)を登った峠に、絶景の堂ガ崎を見渡せる展望台があります。その向かいに、さとみさんが店長を勤める名店・つばき茶屋があります、厨房を仕切るのが母の番匠さつきさん。品数豊富な料理が根強いファンや観光客を惹きつけます。
さとみさんが採った「サザエ丼定食」は開店当初からのメニュー。
「イカ様定食」は能登町小木名産の船凍イカを使ったメニュー。東京なら2,000円を超えるようなメニューが、ほぼ半値で食べられます。
高屋の西、約9kmの所にあるのが珠洲市長橋漁港。ここは元々水深が浅い海域でしたが、能登半島地震による隆起によって、港内は歩ける状況なってしまいました、沖に出る航路も隆起した岩場に阻まれています。長橋は地元の高齢漁業者達が夏場にサザエ網漁を行っていたのですが、それも出来なくなってしまいました。
元日発災の能登半島地震で甚大なダメージを受けましたが、それでも能登人は地道に暮らし再建に励んで来ました。なのに、9月21日、記録的な集中豪雨が奥能登を襲い、土石流が復興を目指し歩んでいた町を飲み込みました。
「今回は、さすがに心が折れた──」
そんな嘆きを、数多く聞きました。
2011年に国連の世界農業遺産に認定された能登の里山里海。その象徴が、能登さいはての海とつながる能登人の暮らしです。
かつてない地震に、追い討ちをかけた豪雨。土砂や濁流が海に流れ込み、沿岸のサザエやアワビの稚貝に影響が出ることが懸念されます。
能登が苛まれている姿、苦しいです。
イベント名 | 能登半島地震と海の幸 |
場所 | 珠洲市・外浦の海 |