このほど完成した加賀市橋立町の海を舞台とする海ノ民話アニメ「お夏のがんど」。民話のふるさとにある橋立小学校で1月14日(火)午後、児童88人と保護者約60人が参加して、アニメ上映会が開かれました。
「お夏のがんど」は 病床に伏せる母親を支える娘お夏が、橋立の海の潜って100個以上のサザエを採る物語ですが、ある日99個までサザエを採り、最後の1個を求めて危険で入ってはいけないとされる海の洞穴「がん洞」に入ってしまい、帰って来なかった──という少々悲しい海ノ民話です。
アニメを視聴した児童達、特に低学年の子ども達は「海は怖いところだと思った」など率直な感想を述べていましたが、高学年の中には「危険な場所には立ち入らないことが大切だと解った」など、海ノ民話が伝える“教訓”を感じ取った児童もいました。
意見交換に続いて、加賀橋立の「北前船の里資料館」ボランティアガイドを務める呉藤満次さんが、「お夏のがん洞」の写真を子ども達に見せながら解説。呉藤さんはかつて素潜り漁も行っていた経験から「私はお夏のがん洞に3回入ったことがある。中には海藻が生えていないのでサザエは1匹もいない」と貴重な経験を語りました。
さらに「素潜りをするとサザエをもう1個、もう1個と思い、危険な目に遭う」と話し、お夏は危険な場所に立ち入らないことや、命の大切さを伝えていると締めくくりました。
上映会後、海ノ民話のまち事務局が制作した「お夏のがんど」アニメのDVDを東野和彦校長に贈呈しました。
橋立小学校1階の廊下には、ふるさとの名所などを伝える掲示があり、その中には「お夏のがん洞」の民話を伝える記述もあります。
実際の「岩洞(がんどう)」は、海の絶景を誇る加佐ノ岬周辺の海沿いにあります。辺りには深い洞穴が何カ所もありますが、陸地から全容を望むのはほぼ不可能。船などで海からしか見られません。橋立町の北前船の里資料館には昔撮影された「お夏のがん洞」の写真が収蔵されています。
加賀橋立は幕末から明治にかけて活躍した北前船の貿易で栄えた土地で、数多くの大船主を輩出したことから「日本一の富豪村」との異名をとりました。風情ある町には歴史的文化的価値が高い船主屋敷がたくさん遺っていて、2017年には文化庁の日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」に認定されています。
「お夏のがん洞」は橋立町から高台に登ると、海の絶景が見られる加佐ノ岬の一角にあります。駐車場から歩いても岬までは数分で着くので、散策に訪れてみてはいかがでしょう。「お夏のがん洞」までは、雨が降るとぬかるむ泥の道もあるので、履き物には気を付けましょう。
イベント名 | 海ノ民話「お夏のがんど」上映会 |
参加人数 | 小学生児童88人、保護者約 60人 |
日程 | 2025年1月14日(火) |
場所 | 石川県加賀市 橋立小学校 |
主催 | 一般社団法人 日本昔ばなし協会 |