10月15日(金)、16日(土)に東京・二子玉川で開催された「海のごちそうフェスティバル」は、新型コロナ感染症が一段落したタイミングもあって大好評でした。残念ながら訪れた人しか分かりませんでしたが、会場のステージではトークショーなど様々な企画が繰り広げられていたのです。
実はこのステージイベントの冒頭で、海と日本プロジェクトを推進する日本財団の海野光行常務理事が、「海と食」に関する意識調査結果の記者発表を行っていたのです。
それは、極めて重要な内容だったのです。
アンケート項目は色々ありますが、主な結果を抜粋します。さすが海洋国家ニッポン! 8割以上の人達が海の幸が好きだと回答し、魚介料理を週2日以上食べる人は6割に迫るそうです。和食だけではなく、欧風料理やフィッシュバーガーもありますので、これは納得。そして、その関心は鮮度の見分け方や調理方法に向かっています。これも分かりますね〜。つまり「海の幸グルメ」に興味が湧くのです。
さて…。
今、海には極めて深刻な問題が起きています。地球温暖化に伴う海水温上昇の影響は、北極や南極の氷が溶けている衝撃の映像を見た人も多いためか、高い認知度でした。更に近年、台風や集中豪雨など大きな被害をもたらす気象変化の一因が地球温暖化であることも広く知られているようです。
一方「海の幸グルメの危機」の認知度の低さも調査で分かったのです。余り知られていない言葉の一つが「海洋酸性化」。植物が二酸化炭素・CO2を取り入れる光合成は良く知られていますが、実は海もCO2を黙々と吸収しているのです。つまり、地球のCO2が増えるのに比例して海水は徐々に酸性になっているのです。酸性化が進むとどうなるのでしょう? 「強い酸」はカルシウムを溶かすので、貝類が貝殻を作りにくくなる…。
つまりサザエやアワビが生育しにくくなるのです。貝類を餌にする生物もいるので、これは大問題です。奥能登・輪島の誇る素潜りの海女漁に影響が出てしまう危険性もあるのです。
実は魚にも、海水温上昇による極端な変化が現れています。かつて石川では全く取れなかったサワラが、約20年前から急激に取れ始めたのです。サワラはもともと西日本など温かい海に暮らす魚でした。それが石川沖で急激に取れ始めた主要因も、海水温上昇です。海が温かくなったため、サワラが北上して来たのです。今や生産額ではブリに次いで2位。しかし石川にはサワラを食べる文化がないのです。水産資源が急激に減っているというのに…。
そのブリも、本来は南方系の魚だと知っていますか? かぶら寿司にも使われるブリは、石川にとっては馴染みの魚です。ところが北海道では意外にも殆ど取れなかったそう…。それが近年、大量に取れるようになったので、贅沢な話に思えるかも知れませんが、北海道ではブリを食べる習慣がないので困っているんだとか。石川のサワラと同じ現象です。
サンマ、サケ、シラス、サクラエビ…。日本人が好んで食してきた海の幸の、記録的不漁というニュースを良く耳にするようになってきました。
美味しい海グルメばかりでなく、「海と食」とのただならぬ関係に、少し目を向けてみませんか?
イベント名 | 「海と食」に関する意識調査結果 |
日程 | 2021年10月15日(金) ※記者発表 |
主催 | 日本財団 一般社団法人「海と食文化フォーラム」 |